インプロとは? ~あるいは祈り~

ここでは、このblogの主題でもある「インプロ」について、それってなんじゃらほい?を綴っていこうと思います。

 

一般的によく目にするのはこんな感じですね。

 

「インプロ」とは、英語の「improvisation」の発音(インプロビゼーション)を縮めたもの*1であり、その意味は「即興」である

 

で、ちょっと洒落た(?)説明がされる場合は、この英語を分解したりして、いわく…

 

im/pro/vi/sation に分けて

  • im:否定の働きをする接頭辞(語の頭につくやつね)

  →「ミッションインポッシブル」っていう映画なんかは「Mission Impossible」なわけで「ポッシブル」は「出来る」だから「im」がつくと否定されて「出来ない」になるから、「(遂行)不可能なミッション(=任務)」てわけですね。

  • pro:時間的な「前に(=未来に)」※空間的な前もありますが…

  →以下の英単語なんかを知っていると、イメージが湧きやすいかもです。

   proactive: 積極的な、先を読んで行動する(「active: 活動的な」)
   proceed: 進む、始める(「ceed: 進む」)
   prolong: ~を長引かせる、延ばす(「long: 長い」)

  • vi:ラテン語由来かな?「見る」って意味
  • sation:接尾辞で名詞化する働きを持つ

を全部合わせると「(前もって見る≒)予見することができないこと」となり、ここから「どうなるか分からないこと」っていうニュアンスも一緒に説明されたりします。

 

まあ、元来の英語の意味合いからすれば「なるほどそうか」となりますし、これはこれで意味がつかめる感じがします。

 

が!

 

僕はここで、もう一度、日本語訳の「即興」という言葉に注目したいと思います。

 

先の例に倣えば「即」+「興」なわけで…ここからは僕の解釈を多分に加えていきますが…

 

  • 即:今此処(イマココ)〔英語でいうと「Here and Now」〕の意味合いを含ませたいところです。

となると、「即興」とは「イマココで興じる」ということになろうかと思います。

 

では、「興じる」とはいったい、どういうことでしょうか。

 

以下はネットの「コトバの意味辞典」から拝借してきたものですが…

 

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…お分かりになりましたでしょうか? そうです。

 

楽しんで熱中する・愉快に楽しい時を過ごす

 

ことが「興じる」ことであり、そして

 

気分が盛り上がるというニュアンスもあります。

 

で、僕としては、これをこそ強調したいと思っています。

 

何が言いたいかというと…

 

昨今、特に演劇分野のインプロ*2が、他の分野に「役立つ」という文脈で活用されることが増えてきています(これを「応用(アプライド)インプロ」と呼んだりもします)。

 

それはそれでけっこうなことですし、喜ばしいことだなと感じてはいるのですが、一部では「その効用性が過剰に重視され、それと反比例するように“興じる“ことが損なわれている」状態が起こっていることを耳にすることもまた、多くなってきました。

 

そうなるとインプロが「意味がない」とか「効果がない」とかの認識になってしまう可能性をはらんでいるわけで、それってなんだかとても残念な気持ちになってしまいます。

 

これは僕の持論であり願望なので、異なる見解もいつでもウェルカムなのですが、インプロは実は非常にデリケートなことを扱うものでもあるので、そこで“興じる”ことが損なわれていると、期待している効用性も十全に生じない/感じられない、ということが往々にして起きがちに思われます。

 

(かといって、その場を預かる人が「興じましょう」とすればいいかというと、そんなに簡単なものでもなくて、「それとなく自然に、興じてしまうような仕掛けをいかに仕込み、かつ、その振る舞いをもってして興じるを体現して、そうした場にする働きかけをしているか」にかかる部分も大きく、それはそれで腕の見せ所にはなってくると感じていますが、詳細はまた別の機会に…)

 

なので、特にインプロを他分野に(限らず本来の演劇分野でも)活用しようとする際には、ぜひとも「興じる」ことを忘れないで欲しいなぁと、割と真剣に思っていたりしますし、僕自身が場を持たせてもらう場合もこれは最優先で、意識することがなくても、自然と立ち現れるようになることを目標としております。

 

そうした状態であり/場が成されていれば、自然と人は伸び伸びとふるまうことが易しくなり、いつの間にか没頭して楽しんでいて、結果として期待する効果も表れるものという、経験からくる信念に近いものがあったりします。

 

なんというか、これはもう僕の願いであり、祈りでもあります。

 

あれ?もしかして僕って、インプロのこと好きなのかな???

 

 

*1:英語ではimpro/improvと略式表記される

*2:インプロビゼーション自体は音楽やダンスなど主にパフォーマンスが関係するあらゆる分野で用いられます