美しき世界 ~インプロな空間~

美しき世界 僕たちを包んで
昨日も明日もない 今だけがここにあるよ
溢れる ラ…ラ…ラ…

B'z『美しき世界』

 

さて、今回は(前回のポストで)「僕にとって欠かせないテーマであるインプロの「共創」あるいは僕のインプロのおけるこだわりについて」書くとしていましたが、よくよく考えたら、それがすなわち、前々回の投稿の最後で深掘りするとしたうちの1つ目

1.インプロにおいて大切な心構えが浸透し、体現(あるいは、体現しようと)されている場である

についてでもありました。

 

ということで、今回は、それって具体的にどんな場なの?を見ていきましょう。

 

一応ですが、ここでいう「インプロにおいて大切な」というのは、あくまで僕の意見なので(といっても乱読したインプロの洋書群の内容からは大きく外れてはいませんが)、そうじゃないという人もいるでしょう。

 

「これがインプロだ!」というのは、その発祥と発展からして、一概にいえないものになっているのが現状でしょう(いわゆる流派のようなものを想像してもらうと分かりやすいかと)

 

僕はこれまでの知識と経験から、あえてというとDel Closeが志向したインプロ成分が多めな気がしているので、軽くこちらの本なども参照にしながら、話を進めていこうと思います。

※ちなみにここでの「Comedy」は一般的な日本人が思うコメディとは多分ちょっと違います。

 

 

さて、では何がインプロにおいて大切と僕が考えるかというと、これも全てを挙げていたらまたこの記事が長くなってしまうので、ここではポイントを3つに絞ってみます。

 

僕がインプロで大切だと思うこと

①Agreement(合意)がとれている

 このblogでは繰り返し登場していますが、先の本にも、以下のような文言があり、やはりこれは外せません。

*Agreement is the only rule that cannot be broken.
(合意は破ることのできない唯一のルールである。)

KEY POINTS FOR CHAPTER TWO より

 このためには「聴けている(Listen)」ことが重要になってきます。そして、そうするためには「サポート」をする姿勢も必要となってきます。これはある意味で「相手を尊重」している状態だと成されやすいかと思います。

これにやや関連して、相手との向き合い方で

*Treat others as if they are poets, geniuses and artists,
and they will be.
(共演者を詩人、天才、芸術家であるかのように扱いなさい、 
そうすれば、彼らは(実際に)詩人、天才、芸術家(であるかのよう)になる。)

KEY POINTS FOR CHAPTER THREE より

ということもあり、実際に僕にとってもこれは実感値があるので、お勧めです。

 

②相手のみならず自分も尊重している

アグリーメントを成すために、相手を尊重し、サポートを心がけ、聴くことに注意を払うことは非常に大切ですが、それだけでは片手落ちな気がします。

現状の日本で、キース・ジョンストンのインプロを謳う人たちはよく「Give your partner a good time.(相手に素敵な時間を提供する)」や「Make your partner look good.(相手を素敵に見せる)」を持ち出してくる印象がありますが、先に挙げた本の中にも、これに類する記述があります。

ただし、こちらは

*The best way to look good is to make your fellow players look good.
(自分を素敵に見せる最善の方法は、共演者を素敵に見せることだ。)

KEY POINTS FOR CHAPTER THREE より

となっています。

煩悩まみれでいつまで経っても我欲が捨てきれない僕には、こちらの方がしっくりきます。だって共演者だけじゃなくて、自分だって素敵に見られたいもん…。

というのは、半分冗談ですが、半分本気です。

でも結果的に両方が素敵に見られるんだから、やっぱりこっちの方がよくないかなぁ…。

 

僕ですら(?)一時期「相手の為に、相手の為に」としていたあまり「自分はどうしたいか?というウチなる声(inner voice)」に耳を傾けていないときがありました。

その時はちょっと抜け殻のようで、インプロがつまらなくなるというよりは、何も感じず、ただこなしているという感覚でした(ある程度技術が身につけば、表面的にはこなせるようになるのはどの分野でも同じかもです)

「相手の為に」が「自分を滅して」と結びついて、それが行き過ぎてしまうと、変に謙遜して自分の想いを抑えたり、しまいには卑屈にすらなってしまうことも、人によっては起こるようです。

そうしたときは往々にして、表現も縮こまりがちで、逆に共演者に気を使わせてしまい、お互いに大胆な表現や行動がしづらくなってしまうことも無きにしも非ずです。

 

というわけで、相手を尊重することと、自分のことも尊重すること、これが良い塩梅のバランスでなされていると、お互いに不要な気を遣うことなく、自然なかかわりをもってインプロに臨むことが出来る、と僕は考えています。
(何事もバランスが大切ですね…自戒)

 
③共にイマココにいて興じられている

①②とくれば、最後はそう、これですね。

こちらで書いたものですね。

hechapprin.hatenablog.com

 

①と②を生真面目に力んでしてるのではなく、③を含んで、それぞれが自分からこれをしたい!という想いがあり、無理なく自然に軽やかな状態で、インプロがなされている。

 

こういう場であれば、互いが自らをいかんなく発揮し、それを支え合うことで安心感も生まれ、普段ならちょっと躊躇して「やめておこうかな」となることにも、なんだか不思議と挑むことができ

意外と上手くいっちゃったりするもんだから、今度は余裕ができてさらにって感じで、いつもよりも色んなことを試して遊んでみたり、なんてことがいつの間にやら行えてたりします。

 

これを某国民的アニメのように言うと…

 

互いに「愛」をもって接しているうちに、「勇気」が自然と湧いてきて、そこに「遊び心」がスパイスを加えている状態が生成されている場

 

となるかと思います。

 

そんでもってこれって、僕にはとっても美しく思えます。

 

これをして僕は、インプロで大切なのは『愛と勇気と遊び心』と言っていたりします。

 

そうした場では
「不確定性に対して、互いに協力して、想像力を駆使して挑み、まだ見ぬなにかを、楽しみながら、創造していくこと」
がイージーピージーに感じられることでしょう。

 

いわゆる『共創』がなされている場って、こういうところなんじゃないかと愚考します。

 

Del Closeの智慧 feat. Trust(信頼) 

と、ここで良い機会なので、Del Closeの成分多めな僕は、これに関連して、またもや彼の智慧をこちらに開陳しようと思います。

 

※何度か出てきているこちらの本からです

 

以下が、Del Closeが「ハロルド」という「ロングフォーム」(比較的長い時間のパフォーマンスをするスタイル)の形式の一つで、一般原則として示したものです。

 

※文字の色に注目(僕による色付けです)

「デルの<ハロルド>における一般原則(Del's General Principles for the Harold)」

・あなた達は、全員が、サポートをする俳優である。(You are all supporting actors.)

・常に自分の衝動に気を配ること。(Always check your impulses.)

・”必要とされ”ない限り、決してシーン〔場面〕には入らないこと。(Never enter a scene unless you are

NEEDED.)

・共演している俳優を救うこと。作品については心配しないこと。(Save your fellow actor, don`t worry about the piece.)

・第一に為すべきことは、サポートをすることである。(Your prime responsibility is to support.)

・いかなるときでも、知性の限りを尽くすこと。(Work at the top of your brains at all times.)

・観客を過小評価したり、見下したりしないこと。(Never underestimate or condescend to your audience.)

・ジョークは不要(ジョークだと明言されている場合を除く)。(No jokes (unless it is tipped in front that it is a joke.)

・信頼すること...仲間の俳優があなたをサポートしてくれると信頼すること。彼らに重荷を負わせたとしても、彼らはなんとかすると信じること。自分自身を信頼すること。(Trust... trust your fellow actors to support you; trust them to come through if you lay something heavy on them; trust yourself.)

・起きていることの判断を避けること。ただし、(シーンに登場するか、シーンを終わりにするか、による)助けが必要か、次に続くのは何が最善か、あるいは、もしサポートが求められたら、どう想像力でサポートできるかは除く。(Avoid judging what is going down except in terms of whether it needs help (either by entering or cutting), what can best follow, or how you can support it imaginatively if your support is called for.

・聴くこと(LISTEN)

青:相手への気遣い≒「愛」と(事故ってしまうこともあるけどそれでも)実行する「勇気」
緑:自分自身(の内なる声)への気遣い≒「愛」
赤:「Trust(信頼)」 ※後述
紫:相手と自分への「愛」(Agreementの素)

 

という感じで色付けしてみました(無理やりかもですが…)

 

ここで、こちらもインプロでよく大切だと言われる「Trust(信頼する)」にちょっと着目してみましょう。

 

実に具体的に「何を信頼するのか」について書かれていて、しかも順番がまたシブいです。。。軽く私のコメントを入れますので解釈の助けにしてください(なるかな?)

(以下)

(1)仲間の俳優があなたをサポートしてくれる

   ⇒まずは最初にこれを信頼するところから始まりますね。

   信頼を裏切らないように、自分も相手をサポートしましょう(笑)

(2)彼らに重荷を負わせたとしても、彼らはなんとかする

   ⇒あいつなら大丈夫、きっとうまくやってくれるさ!って感じでしょうか。

   先に紹介した「共演者を詩人、天才、芸術家であるかのように扱う」ともつながりますね。

(3)自分自身を

   ⇒自分も自分の共演者ですからね。忘れずに信頼しましょう。

   インプロバイザーは俳優でありながら、脚本家や演出家などの役割も同時に担うので、彼らが俳優としての自分を信じると読み替えてもいいかもです。

 

どうですか、これ…シビれません???

 

良くインプロの洋書を読んでいると「Trust」が大切と出てきますが、いまいち意味が広すぎて漠然としていました。

かといってむやみやたらと信頼するのは妄信に繋がる気がして、モヤモヤしている時期がありました。

が、こうして具体的にその対象を、順番に意味を持たせて書いてあると、より理解が深まる気がしました。

 

まあ、取り違えや拡大解釈もあるかと思うので「私はこう思うよ」ってのがあれば、ぜひ聞かせてください。

 

ほかにも触れたいことがあるんですが、例によって一記事が長くなってしまったので、このあと「おまけ」的な短い記事を作って、そこで述べたいと思います。

 

と、ながながと述べてきましたが、こうした信頼が成立しながら、愛と勇気と遊び心に溢れる場、これをもってして僕は「インプロな空間」と考え、呼んでいます。

 

そこでは、「競争」ではなく「共創」がとめどなく繰り広げられていくこと間違いなしです😊

 

※みなさんのご意見もぜひ、お気軽にお聞かせ願います!